本校の校内研究
国際社会を主体的に生きる子どもの育成
コミュニケーション力の向上を目指して
1 はじめに
本校は,平成16・17年度に熊本市教育委員会の委嘱を受け,「国際社会を主体的に生きる子どもの育成」というテーマで2年間の研究を行った。今後ますます進展していく国際化への対応という現代的な課題を見据え、コミュニケーション力を高めるための研究を行っていった。
そのために、本校独自の学習活動として、「東っ子学習」を構想した。総合的な学習の時間のうちの国際理解に関する学習と、1〜2年生で位置づけた学校創意を合わせて「東っ子学習」と名づけた。加えて、学習活動の基礎となる国語科、話合いによる諸問題の解決をする学級活動においてもコミュニケーション力の育成に取り組むことにした。特に「英語活動」は,学校独自の年間指導計画や授業設計を構築するという意味で最も力を入れるべき課題となった。

2 研究の概要

(1)英語活動の意義とコミュニケーションのための三要素
  小学校の英語活動の意義は,コミュニケーション力の育成にあると考える。そのためには,「意欲」「技能」「思考」の三つの要素が必要になる。「コミュニケーションしたい」という意欲が乏しければ,コミュニケーションそのものが成り立たない。また,意欲があっても「笑顔で接する」「言葉で伝える」といった身体的言語的技能が乏しければ,意志や感情を伝えることができない。さらには,思考力が乏しければ,「何をどのように伝えればいいのか」という伝えるべき内容や方法を考えることができない。「意欲」「技能」「思考」は,コミュニケーションの場において,極めて重要な三要素だと言えよう。
 

(2)英語活動の実際
 本校の英語活動は,低学年は学校創意の時間(第1学年:年間8時間,第2学年:年間12時間)において,中高学年は総合的な学習の時間(各学年年間35時間)において行われる。
 学年の段階による学習活動は,以下のように考えている。

 低学年:簡単な英単語を使って遊ぶことによって,英語の音やリズムに慣れる。
 中学年:簡単な英語で会話しながら遊ぶことによって,コミュニケーションを楽しむ。
 高学年:英語を使うことによって,互いの意志や感情を伝え合いコミュニケーションを楽しむ。

 児童は,英語活動を楽しんでおり,学習意欲も極めて高い。後述する「タスク学習」において,高学年の児童が,積極的に英語を使おうとすることができるようになるのも,低学年からの積み重ねによるところが大きいと言える。この2年間,英語活動を取り入れることによって,外国語を話す人々と臆せずに積極的にコミュニケーションをとろうとする意欲や技能が高まっていった。「外国語(=母語以外の言葉)で話しても意志や感情が通じる」という面白くて楽しい経験が,児童の意欲や技能を高めていくことの要因になるのだろう。

(3)英語活動の課題とリアルで必然性のある場の設定
 ゲームを取り入れて,定型句と単語を組み合わせれば,それなりの会話らしい活動は可能となる。たとえば,「What fruit do you like ?」「I like apples」といった会話は,低中学年でもできるようになる。大人が見れば,早い時期から始めれば英会話ができるようになるではないか,といった錯覚に陥ってしまうが,この段階では,まだ児童は記憶したことを再生しているにしかすぎない。高学年の児童が,低中学年の英語活動と同様の「記憶・再生型の学習」に少しずつ興味を失っていくのは,児童の精神年齢が高まるにつれて,このような学習が合わなくなるからではないだろうか。
 コミュニケーションの実の場においては,「記憶・再生」ではなく,「互いの意志や感情を伝え合いながら,意味を作り出す」という活動に向かうはずである。児童は,活動そのものの楽しさから,コミュニケーションの本質へと興味・関心がうつっていく。そう考えると,教師は,学年が上がるに従ってリアルで必然性のあるコミュニケーションの場を設定する必要がある。
 そこで,昨年度から,第6学年において「国際交流のための準備」を課題とした「タスク学習」に取り組み始めた。外国人留学生と交流をするために,「相手の国を調べる」「相手の母語による挨拶を練習する」「英語による自分や熊本の紹介を行う」「日本語による相手のプレゼンテーションを聞く」といった一連の活動を行う。アジア・アフリカからの留学生が多く,英語はおたがいにとって「外国語」であり,コミュニケーションのためのツールとなる。また,欧米圏ではなく,様々な国の人々とかかわることによって,異文化共生の考え方も理解できる。
 また,今年度からは,中国の小学校との学校間交流も行うことにした。同年齢の児童が,それぞれの作品やビデオレターを交換することによって,親睦を深め,相手の国へ興味・関心をもつことができるようにすることをねらいとする。また,手紙ではなく,あえてビデオレターにすることによって,学習してきた英語を使う場をもうけることにした。
 このような,リアルで必然性のあるコミュニケーションの場を設定することによって,児童の意欲は高まり,達成感や満足感も極めて高いものになった。

(4)国語科による思考力の育成
 リアルで必然性のあるコミュニケーションを行うためには,意欲・技能・思考力を高めていく必要がある。しかし,英語活動によって「意欲」や「技能」は高めることはできても,「思考力」を高めることは難しい。なぜならば,考える作業は日本語で行うからであり,そこには論理的な思考力が要求されるからである。だから,「英語よりも日本語の方が大切である」という主張は,「考える力が育っていなければ真のコミュニケーションは不可能だ」という意味においては理解できる。本校においても,実際にプレゼンテーションをしたり,ビデオレターを作成したりする段階においては,かなりの思考力が児童に要求されることとなった。
 しかし,英語活動をやめて,単純に国語の時間を増やせば良いというものではない。むしろ,従来の国語科ではあまり意識されていなかった「コミュニケーションのための論理的な思考力」を高める学習を取り入れる必要がある。そこで、今年度は具体的な取組として以下の学習を考えている。

 ○ 児童の対話の技術を高めるための問答トレーニングによる学習活動
 ○ 児童の説明の技術を高めるための描写・説明のレッスンによる学習活動
 ○ 児童の思考や感情を「言葉」にするための「書く」学習活動
3 平成18年度の取組

○ この2年間の取組によって,児童のコミュニケーションの意欲や技能が高まったという成果が見られた。また,リアルで必然性のある場の設定を学習に取り入れることができた。
● 3年目にあたる今年度は,「英語活動」と「国語科」の連動を図りながら,児童の思考力を高めることが大きな課題である。

 そこで、校内研修にあたっては、主として低学年では、論理的な思考力を育む国語科の授業研究に焦点をあて、高学年では、コミュニケーションの意欲を高める英語活動の授業研究に焦点をあてている。
 また、高学年の国語科においては、少人数指導において、論理的な思考力を高める取組を行うことにしている。

また、研究授業においては、以下の5つのカテゴリーに分けて目的をもたせて計画的に行うことにしている。
(1)モデル型:昨年度までの研究で開発された授業をモデルとして提示して職員間で共有化する。
(2)研修型:授業力向上のために、新メンバーが授業に挑戦する。課題を共有化して互いにアドバイスを行う。
(3)提案型:新しい授業づくりのための「たたき台:して授業を行い、取り組むべきところを明確にする。
(4)検証型:課題解決のための新しい授業の姿を提案するとともに、その効果を検証する。
(5)成果型:年間を通した学年部の取組の成果と課題を報告する。