力坂

外輪山の上と下をつなぐ急坂です

本校は金峰山の北外輪山の上部にあります。阿蘇で例えるならば、大観峰のやや下あたりに学校が立っている風景を想像してください。阿蘇よりもずっと小さなスケールですが、想像されたような位置に本校は立っています。また、外輪山の斜面には森林が広がり、ミカンやナシなどの畑が点在します。ミカンの花の咲く時期には、子どもたちは甘い花の香りを楽しみながら登下校します。

岳地区の子どもたちは、県道から学校までの間では、およそ150mの標高差を登下校していることになります。学校までは集落と、まるで熊野古道を思い出すような杉林の中を歩きます。その後に見えてくるものが「力坂」です。力坂は登り口から本校旧正門までの区間を指します。道のりは500mほどではないかとのことです。その間に数百段の階段があります。坂の始めと終わりの標高差については国土地理院のWEB頁で調べた方がいらっしゃって、その結果は102mだったそうです。

階段の始まりから本校旧正門ー運動場最南端の国有林側ーまで続く力坂沿いは杉林や竹林があります。左下の航空写真でいえば、手前の森の中に位置しています。いうなれば、森の中の通学路であり、自然豊かなルートです。下部から言えば、力坂は上部到着前に分岐し点があります。右折して力坂をそのまま進めば芳野小学校旧正門から運動場に入ることになります。旧正門手前には旧力坂への入り口があります。また、野鳥掲示板と「おいでよ野鳥ハウス」が見えたら、ここでようやく「力坂」という名標が現れます。この区間は左側に「芳野みんなの森」を見ながらうっそうとした木立の中を進むことになります。逆に下校のときは、子どもたちは旧正門から森へ入っていく光景を見ることができます。

また、分岐点から左折すれば、しばらく小道を歩きます。ほどなく芳野中学校の職員駐車場にたどり着きます。中学校から小中学生が一斉下校するときもこのルートを通ります。

この間、ほかの道と合流することはありません。上記しましたように、分岐は小学校への力坂と中学校への小道のみです。各地に門の前に階段や坂道のある学校がありますが、力坂をそのようにとらえますとまるで芳野小中学校の専用道路のように思ってしまいそうです。

 

力坂は市道です

しかし、力坂は熊本市の管理する市道です。自転車も持ち込むことのできない人専用の小道です。力坂という名称について、誰が名付けたのか、いつからそう呼ばれているのか、その由来はいまのところ不明です。「歩いて登るために相当な力が必要な坂だから」や「毎日歩くことで力がつくから」だと想像できるだけです。

一方で、力坂についてわかっていることもあります。それは、以前は①上半分以上の大半は別ルートだった②舗装してなかった③照明灯もなかったということです。

現在は①一部のルートが変わり、道の上は森が切り開かれて空の下を歩く区間があります。また、②路面はコンクリートで舗装されて、できる限り流水に濡れないように階段とスロープと水路に区別して施工してある区間もあります。道の脇への転落防止柵もあります。そして、③等間隔で照明灯が設置してあります。登下校する時間帯には、天候や季節によっては薄暗い時もあります。ものすごく明るいということではありませんが、照明灯があることでほっとします。

なお、古い地図には、力坂の道が本校の運動場の東端沿いに北上し、現在の東側の門から再び市道につながって芳野診療所前までと続いている道が記載されています。このことから、芳野小学校がこの地に開校した大正10年以前は、力坂は外輪山の内側の岳地区と外側にある三ノ岳方面等の大多尾地区を結ぶ生活道路の一部だったのではないかと推察できます。現在、その旧道は運動場(東側沿い)に飲み込まれた状態で存在していると解釈できそうです。現在、生活道路として使用される方はいらっしゃいませんが、ときどき力坂の登坂(とはん)を楽しむ市民の方を見かけることがあります。

 

子どもたちの「『健やか』の心」を育てる力坂

岳地区の多くの子どもたちは、毎日、息を切らして登校します。途中で座り込むなどの低学年の子どもがいることもありますが、そのようなときは上級生がその子について励まします。状況によっては最後まで思いやりを持って寄り添いながら登校します。そうして、子どもたちは少しずつ坂になれ、体力をつけていきます。

到着直前にはうっそうとした森から空の広がる運動場とその先の校舎が見えてきます。到着したときには視界が明るくなり、そのときには多くの子どもたちは息を切らしています。しかし、普通の表情で児童昇降口まで歩き続けます。そして、一日の準備や委員会活動を済ませたら、運動場へ出てきて遊ぶ子も少なくありません。

 

子どもたちの「『ことば』の心」も育み続けています

下りとなる下校時に、子どもたちは転んでしまうこともあります。転んだら「大丈夫?」と一緒に下校している子が声を掛けます。もしもけがをした場合は子どもたちが集まり、支援しています。自分のランドセルに携帯している消毒剤や絆創膏、ティッシュなどを取り出し、応急処置をするのです。

このような姿は百年以上に渡る力坂の登下校で生まれ、連綿と引き継がれてきた思いやりの心です。すばらしいDNAであり、現代風に言えば相手意識や危機対応能力、共助の精神が育まれているのです。

多くの子どもたちは、小中学校の9年間を登下校します。その間、子どもたちは体力だけでなく、思いやりなどの心が育まれます。本校区独特の通学路ですが、徳育や体育ー「芳野小『まごころ』運動」でいう「『健やか』の心」「『ことば』の心」ーの育成に大きく影響を及ぼす、貴重な場といえます。

安全な登下校のために

力坂は森の中の小道です。そのため、雑草が生えやすく、落ち葉がたまりやすい環境です。また、大雨や台風の後には、倒木もあります。大雨等の場合は、子どもたちは保護者の方の判断で乗用車を使って登校しています。また、大雨等の翌朝には小中学校の職員が力坂を下り、倒木や沢の様子を確認し、木を除去するなど対応しています。倒木の大きさによっては、市に連絡して対応していただいています。

また、年に複数回、岳地区子ども会の保護者の皆さんが力坂沿いの除草活動に取り組まれます。4月や8月の新学期開始に合わせるなどして活動されています。おかげで落ち葉で滑ったり子どもたちは茅で手を切ったりするなどのけがを負う可能性が低くなります。

近年ではスズメバチやヘビなどの目撃例はありますが、幸いにもイノシシなどの大型害獣との遭遇例はありません。坂の途中にはイノシシの罠の注意喚起看板が設置してあります。今後も不審者やイノシシなどによる被害のないように、地域諸団体様等と連携していきたいと思います。

 

 

【路面改修工事実施】

老朽化が気になる力坂ですが、令和5年8月には、学校から分岐点までの区間の路面が改修されました。改修工事は、経年劣化の路面の破損部分や苔の除去等、まずは、これまでの路面をきれいにすることから始められました。

その作業の後で路面にボンドを添付し、更にその上にモルタルが吹きつけられています。滑り止めも施されています。子どもたちは、その上を歩いています。以前よりは安全に歩くことができています。

 

※令和5年6月3日付熊本日日新聞朝刊の随時掲載「坂道を上れば」にて紹介されました。 

※リンク先の一部は本サイトの管理外です。

 

  

 

ページトップに戻る